私が出会った数え切れない悲しみと新生への希望・・・・

11.テント学校の子供たち

寄宿舎から車で1時間半ほど走れば学校があると教えられました。

学校に行けばたくさんの子ども達がいる。
会いに行こう。
 訪ねた先には大きなテントが張られていました。
校舎が破壊され、テントが教室がわりなのです。
 そこは、タリバンによって破壊され、現在NGOによって再開された
シバトゥという村の小学校でした。生徒は合わせて248人、男女別学で学んでいます。
 男子テントに入ると、少年達が輪になっていました。パズルのようなものが見えたので、
図工の時間かと思いましたが、そうではありませんでした。
「何を勉強しているの?」と聞くと、彼らは「マイナス」と答えました。
「え?」
「地雷です」
ニルファが訳してくれました。
少年達は様々な種類の地雷をパズルによって覚えようとしていました。
子供たちはこの土地で無事生き延びるための知恵を学んでいたのです。
 次に私が見たのは、手が血まみれで倒れている人、足が吹っ飛んだ人が
描いてある壮絶な紙芝居でした。地雷が隠されている状況は様々で、不審な
ものを見つけたらどう対処すべきか、そして一歩間違えたらどんな目にあうか、
子供たちは繰り返し教え込まれるのです。
事業のカリキュラムに当たり前のように地雷教育が組み込まれているという
現実に、私は驚かされました。

 となりのテントでは、少女たちがダリ語(数あるアフガニスタン語の言語の中で
もっとも一般的であるとされている言語)の読み書きを学んでいました。
「サローム!」と声をかけると「サロ~~~ム!」と大きな声で返事を
してくれました。
「学校に行けるようになって嬉しい?」
「バリ~~~~~~~~~(はい)!」と全員が口々に言います。
本当に嬉しそうな笑顔で。
「勉強して大きくなったら何になりたいの?」
「先生!!」
「なんで先生になりたいの?」
「国の役に立ちたいから!」とまっすぐな瞳で答えてくれました。

私は胸がいっっぱいになり、次の質問がなかなか浮かんできませんでした・・・・・・。

休憩時間になり、子供たちが外へ出てきました。
ここで子供たちを喜ばせたい・・・・・・。何かできることはないだろうか?
そうだ一緒に遊ぼう!
「子供の頃、何してよく遊んだ?」とニルファーに聞きました。
「羊と狼・・・・・・かな」
「何それ?」
「鬼ごっこみたいなもの」
よし、決まった、それにしよう!
鬼ごっこなら、私も子供の頃よく遊んだものです。
「羊が逃げて、狼が追うの。まわりで手をつないで円になっている人は羊の味方をして、
狼を通せんぼするの」と、マルジア(8歳)が教えてくれます。彼女は少女たちの中でも
ひときわ明るい笑顔を持っていました。
 子供たちから私は羊になって逃げる役を任命され、マルジアが狼をすることになりました。
「よーい、どーーーん!」
思いっきり走って、走って、逃げる、逃げる。マルジアが追いかける---。私が逃げる---。
あれ?息が苦しい。と思ったらすぐ捕まってしまいました。(標高3000mの高地だったことを忘れていた私。
ここに住む子供たちのたくましさを実感しました。)
すると、子供たちは喜び、飛び上がってはしゃいでいます。
その笑顔を見て、私も笑い出しました。マルジアも笑い出しました。
 そして、みんなが笑いました。

ここにもうじき校舎が再建される計画があると聞いていましたので、私にはぜひ
この場所に作りたいものがありました。
「今からブランコを作るの。みんな手伝ってくれる?」
「バリ!」
 ここには鉄棒もジャングルジムも、子供たちが遊ぶための道具は何もありませんでした。
だから、せめてみんなで遊べるブランコを作りたいと思ったのです。
 丸太と太いロープを集め、まずはツルハシで地面を深く掘り起こし、4つの穴を
作りました。ツルハシを使うのは生まれて初めてで、振り上げるとそのまま後ろに
倒れてしまいそうでした。そんな私を見て子供たちが笑っていました。
 掘り起こした土を今度はシャベルでかきだします。土埃が舞いあがらないように、子供たちが
水をまいてくれます。
 2本の丸太をつなぎ合わせるため、釘を打ちましたが、またコレがうまくいきません。
金槌の使い方が難しく、釘が途中で台無しになるたび、「ノリカジョン(アフガニスタンの言葉で『からちゃん』
という意味)、なにやってんの?」と子供たちが大声で笑うのでした。
 そんな楽しい時間の中、ブランコが完成しました。仕上げに、みんなどろどろになりながらブランコを
パステルカラーに塗りました。
 まだ乾いてないのに、みんな嬉しくて乗ってしまい、お尻がペンキだらけになってしまうハプニングも。
 みんな、みんな、たくさん笑った一日でした。
 揺れるブランコに夕日が鮮やかな色彩を与えていました。
 子供たちともう少し楽しい時間を過ごしたいと想い、まだ帰ろうとしない私に、
「日が暮れる前に宿舎に帰らねば大変なことになる」とスタッフが告げました。
「ん、どうゆうこと?」と私。
 すると、彼らは「今まで話さなかったけれど・・・・・・」と切り出しました。
 日が落ちてから車で山道を走っていると、ジャーナリストらを狙って銃を持った山賊や
タリバンの残党が現れ、金品を奪われたり、命の危険にさらされる例が多々あると言うのです。
 私は子供たちに別れを告げました。本当に名残惜しく、「明日も来て!」と叫ぶ子供たちに、
とっさに「うん、明日も来るから!」と言ってしまったのでした。
「約束だよ」
「うん、約束ね」
あとで私はスタッフに明日もこの村に来たいと懇願しました。
「約束だから・・・・・・」

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